東京建築カレッジへ

 

かわいい自作の道具たち

縁あって東京建築カレッジで学ぶ生徒さんから、卒業制作で茅葺き合掌造りの犬小屋を作りたいとのご相談を受け、電話ではいくら説明しても、らちがあかないので、池袋にお手伝いに行ってきました。

大工さんの伝統技術を学んでいるだけあって皆さん器用。私が言ったのは細かいことは気にせずにアバウトにそこにあるものでやろうということでした。

自分たちで道具も作り、何とか完成して、無事発表も済んだと写真を送ってくださいました。

何一つわからない中、本をみたり、見よう見まねでやって、良くできたと思います。

やはり自分で手を動かせば覚えは早い!

こうやって若い職人さんに茅葺きに興味をもってもらえるのも嬉しいことですし、私もいい経験になりました。

私がいたのは屋根の半分まで、残りは彼らが試行錯誤してくれました。

左から 小林貴志、石川瑛子、別井大樹、高野成己 (敬称略)

楽しいご縁をありがとうございました

屋根を眺める時間 kayabuki-time

最後の片づけをしながら、自分らで仕上げた屋根を眺める時間

毎日のように10時になると訪ねてきてくれた大工のおじさんが明日からさみしくなるなあと言ってくれる。おじさんの話毎日楽しみだった

たった二週間くらいの事なのだけどやはり終わるのはさみしいし、現場は面白い

 

手仕事の音 茅葺きと左官

去年のあっつい夏の日こと。

私が屋根を葺いている反対側で左官屋さんが壁を塗っていた。

現場で聞こえるのは私が茅を並べる音と左官屋さんの鏝の音だけ。

壁を塗る鏝の音は心地よく、今あの辺にいるかな、茅落とさないようにしようと思いながら葺いていた。

左官屋さんは左官屋さんでかすかに茅の音がすることで私が熱中症で倒れていないか確認していたらしい。

建築現場といえば騒がしいイメージだけど茅葺きや左官の現場はとても静か。

たまに聞こえてくるのは職人の笑い声、歌声くらい

手仕事ってその人のリズムがそのまま聞こえてくるから心地いいのかなと

あの暑かった日を思い出します。

 

 

一生の宝物

去年の秋、縁あって裏ばの葺き替えをさせていただいたお宅。

葺き替えが終わってほっとした日、いただいたメール。

とてもありがたく、たまに見るように大事にしまっておきたい言葉たちですが、茅葺きの家を購入して、実際に住まわれている若い家族のこと、知っていただきたいと思い、掲載の許可を頂きました。

以下引用です

時代錯誤と言われつつも、茅葺きの古民家で子育てをするというのが僕の人生の夢でした。

その夢が現実の形を持てるようになったのは、間違いなく松木さんがいたからです。

友人達に、屋根どうすんの?と聞かれ、いったい何回松木さんのことを説明したでしょうか。

この家に出会ったこと、松木さんと知り合えたこと、4人の子供に恵まれたこと、今はなにか一連の導きのように感じます。

この国が始まって以来、竪穴式住居に始まって、いったい幾世代が茅葺きの屋根に住み続けてきたでしょう。 いかに科学が発展しても、生命としての人は、あくまで生身の人間です。 先人たちの知恵が育んだ、地域の自然に調和した暮らしに、僕は限りなく郷愁を感じます。

自分の暮らしの細部にまでもっと関わり、もっと責任を持ちたいという、現代ではある意味わがままでぜいたくな考えを僕は持っています。

松木さんの丁寧な仕事、地に足着いた考え方、自然体な暮らしぶりには子供達共々、親しみを覚えてやみません。

腕一本で、近代技術に頼らず、傍らには素朴な道具のみで、このあまりに複雑化した21世紀を渡って行ける、職人としての松木さんの生き方は、僕にとっては羨望に値するものです。

我が家ではまた慌ただしい朝が始まっています。陰ながら家族全員で松木さんの健康と活躍を応援しております。

 

ここのお宅には一人で伺ったので、地味な作業が続くことに初めは驚かれていました。お宅に泊めていただき、ご飯を一緒に食べて、思う存分仕事をさせていただいた上に、こんな言葉が頂けること、本当にありがたいです。

去年までの冬はアイゼンやピッケルで登れるくらい凍結した屋根も、今年は雪が滑り落ちて乾いているそう。

何年たってもこう言ってもらえるような職人でありたい。一生の宝物です。